Cool Fire
アルテミア日記
始まり
 陛下から日記帳を頂いた。書き方は良く分からないが、どうにかなると思う。
 一応、単純にアズサの出身国の人が書いたという理由で、図書館にあった『更級日記』と『蜻蛉日記』を読んでみたが、意味が分からなかった。(今度、アズサに聞いてみようと思う)


時代
 今日、アズサに、『更級日記』と『蜻蛉日記』について尋ねてみた。
 この日記がかかれた時代の言葉は、アズサには分からないらしい。でも、『をかし』という言葉が、しみじみとした趣がある、という意味だということは、教えてくれた。
 何で『をかし』の意味だけを知っているかを尋ねると、アズサは苦笑した。何か悪いことでも訊いたのだろうか。


古典
 陛下に仕事の報告に行くと、日記はどうかと尋ねられた。なかなか楽しい、と答えて、アズサのことを訊くと、妖界王は声を出して笑った。
 アズサは、『更級日記』や『蜻蛉日記』の書かれた時代の文章の読み方を教えて貰ってはいるが、苦手だったらしい。
 アズサには悪いことをしたと思う。


ロシアンルーレット
 今日、仕事から帰り、自室に入ろうと扉を開けると、そこには何故か、陛下とお妃様と姫様とアズサがいた。
 テーブルの上には料理。ロシアンルーレットだろうか。妖界王は、こちらを見て微笑んでいた。しかし、関わらないに越したことはない。急いで扉を閉め、見なかったことにした。
 どうでも良いが、何故、自分の部屋でやっていたのだろうか。


食べること
 ロシアンルーレットの翌日、アズサに、見なかったことにしたところを指摘された。
 あの後、一番最初に物を食べさせられるし、姫様は解毒剤があるから大丈夫、と物騒なことを言うし、あの陛下と王妃様の面前で、大変だったらしい。  しかし、あの時自分が入ったところで、その状況は変わらないと思う。


実験
 今日は姫様の実験に駆り出された。
 指示されたものを調合していると、アズサが姫様に色々と質問されていた。
 いつも、溜息を吐きつつ、自分の方を羨ましそうに見てくるが、もし自分が喋れたとしても、アズサのような目には遭わないと思う。


朝食
 食事は、姫様とアズサと一緒に摂る。最近は、姫様が、アズサと地名当てゲームをするようなった。
 アズサは地名を覚えるのも苦手らしい。いつも、答えようと一生懸命なアズサを見て、姫様が(分かり難いが)笑っている。
 姫様には絶対言えないが、姫様のそういうところは、陛下とよく似ている気がする。





 私は、古風な日記帳を閉じた。
 いつも、喋るために書いているアルテミア君が、書くために書いている文章。見られるなどとは、思っていないのだろう。
 とりあえず、一つ感想を言うとしたら、私は、この傍観者スタイルが、羨ましくて仕方が無かった、と言うだろう。


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