ふらりと訪れたのは、二度に渡って、共に旅をした仲間。
鮮やかな金髪を靡かせ、派手な格好に身を包み、大きな弦楽器を担いでいる。
「クロウ、久しぶりだね。だいぶ老けたね」
爽やかに笑う奴を、私はどうしようか心底悩んだ。
とりあえずも顔を見に来るだけで、火の国まではるばるやって来るはずが無い。
「何か用ですか?」
「ライアルちゃんと、フーちゃんに会ってきた。夜の君主に似てきたな」
私は思わず目を細める。奴の目は、懐かしむような目ではない。何かを期待するような目だ。
「ライアルは、夜の君主の子ではありませんよ。妖狼王レンの子です」
「レン、ねぇ」
次は奴が目を細める番だった。
奴は、夜の君主に陶酔している。奴は動き始めたのだ。危険だ。
「夜の君主は偉大な人物でした。ですが、ライアルを縛ることは無いように」
奴は、不快の色をさらに濃くした。私は薄らと笑みを浮かべる。
ライアルは、夜の君主の顔すら覚えていない。全く影響を受けていない。だからこそ、彼女は可能性を持っている。
王に育てられたライアルは、夜の君主とは別の生き方を選ぶだろう。ライアルは、輝ける。
永遠の夜などは無い。夜の隣には、必ず夜明けがある。闇の隣には、輝きがある。
静かな夜は終わった。