and The Cool Wizard
甘え下手
顔色は、高熱のせいか、頗る良いが、体から生気は感じられない。熱が高過ぎて、逆に寝付けないらしく、苦しそうに横たわっている。
「サクさん、お水持ってきますか」
「お願い」
本当は飲みたくないけど、飲まないと治らないだろうから、とでも言うような言葉に、健康なマラボウストークまでもが、気が滅入ってきた。
「大丈夫ですか?」
「生きた心地がしない」
相当悪いらしい。本当に風邪なのか、マラボウストークは不安になった。冗談抜きに、目の前の人間は死にかけている。
「フヨウ様が暇しているのですが」
身籠っているため散歩も儘ならないフヨウは、暇で暇で仕方がないようで、朝から剣を触ったり、家中を無駄に歩き回ったりしているのだ。
「入ってきたら、魔法ぶっ飛ばすって言っといて。僕はこれ以上抱え込む気はない」
その微妙な言い回しに、マラボウストークは素早く反応した。
「高位守護系統の魔法を使いましたね」
高位守護魔法。対象者への有害刺激を、術者に転じる魔法。しかし、転じる際に、刺激は数倍になり、術者の命に関わることもある。
「フヨウが風邪引くと困るだろ。大人しく寝ないし、体のこともある」
図星だったようだ。嘆息と共に吐き出される言葉は、淡白だった。然も、当然のことのように。
「フヨウ様は知らないんですよね」
「魔法使われるのも嫌いだしね、彼女にとって、気を遣われるのも負担だろうから」
ここまで、苦しい思いをしながら、文句一つ言わない。
「甘やかしすぎですよ」
「甘え下手だからね、彼女」
あなたには敵わない。マラボウストークは、その言葉を呑み込んだ。
熱は下がったが、体力が戻らないので寝ていると、ふわりと空気が動いた。
「サク、元気になったのかね」
毛布から顔を出すと、目の前にはひょっこりと草原色の双眼。
「私は暇で暇で仕方がなかったよ」
「フヨウ」
名を呼べばふわりと笑う。何かあるの、と尋ねるかのように。
「水持ってきて」
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