and The Cool Wizard
無自覚砂吐き系の二人に幸あれ

 久しぶりに友人に会いに行った。旅をしていた二人が、定住したと聞き、楽しみにしてやってきたわけなのだが……
「それで、あんたたちちゃっかり子どもいるんだけど、結婚したわけ?」
 二つ下の親友は、何故か赤ん坊を抱いていた。しかも、もう一人の友、彼女と生活を共にする青年と、全く同じカラーリング。
「まさか、別にお互い好きなわけではないからね」
 友人は、赤ん坊をあやしながら、当然のように言う。
「じゃあ、何で子どもいるのよ。不健全よ。大体、あなたまだ十八でしょう!」
「咎められるべきはサクであって、私ではない」
 フヨウは困ったように、手を広げる。
「抵抗しなさいよっ。あんた剣士でしょ。相手はひ弱な魔法使いよ」
「サクは力があるよ。ただ、普段は肉体労働させられるのが嫌で、ひ弱な振りを……」
「ホント……ロクな男じゃないわね」
「そうだよ、クリス嬢。サクの穏やかな微笑に騙されてはいけない。あの人には、弱点がないんだよ。その癖性格悪いし、人間的にどうかと思うよ」
 ボロクソだ。しかし、否定する気になれない。
「大体、好かれてもなければ、愛されてもないからね。遊びだったんだろうね」
 何て男だ、というより先に、どれだけあんたは気楽なんだ、と言いたくなるような、フヨウのあっさりっぷり。
「どうするのよ?」
 サクが、女好きとは思えないが(女遊びするパワーがあるとは思えない)、一応訊いておく。
「大丈夫。あの人は、私しか見ていないからね」
 フヨウは穏やかに笑う。
「どこから来るのよ。その自信?」
 あれか。愛した男を、盲目的に信じ、痛い目に遭う自業自得のお嬢様か。
 しかし、クリスの期待(危惧)は裏切られることになる。
 クリスは忘れていたのだ。フヨウが本当に深窓の令嬢だったら、サクの相手になどなれないことを。
「サクの世界は、自分と私とその他大勢で構成される。そうだろう、サク」
 驚いて背後を見れば、いつの間にか、穏やかな笑みを浮かべた青年が立っていた。
「確かに僕は、君が全てだろうね」
 さらりとサクは言った。優しく笑いながら。
「あんたらさ……」
 クリスはゆっくりと息を吐く。
「自分の言った台詞、客観的に見てみるべきよ」
 無自覚砂吐き系の二人に幸あれ。
(もうどうでも良いわよ! 私、知らないわ!)


TOP





おまけ

「あんたねぇ……手が早いのよ」
「あの日、二人部屋と三人部屋が一つずつしか取れなかった。諸々の理由で、部屋に上手く割り振れなくて、フヨウと僕が二人だけになってしまった。僕は、野宿する、って言ったんだけど、彼女が別に自分は構わない、って言ってね……」
「それで、あいつはあんたがいるのに、あんたよりも先に寝てしまったわけね。無防備に」
「そういうこと。何だか癪だったら、ちょっと弄ってやろうと思ったら……って感じ」
「それは、フヨウも同罪ね」




言い訳

キナ、ライアル、リリーの年齢差を考えると、この手しかなかったんだ。ごめん、フヨウさん by 作者