and The Cool Wizard


「夜空の本質は闇であり、闇は月と星を着飾る。私は、闇を見るのが好きなんだ」
 いつもより僅かに熱を帯びた演説。
「昼だってそうだ。雲も太陽も所詮は青き空の飾り。どれだけ厚い雲で覆おうとも、空は青い」
 若干早口でもある。
「つまり、重要なものは本質であり、中身だ」
 フヨウは言い終わると、これでどうだ、とでも言うようにサクを見た。
 サクはゆっくりと息を吐き出しながら、静かに笑む。
「僕は空なんかどうでも良い。晴れていても曇っていても、灰色だからね」
 怜悧な横顔に、僅かな憂いを孕ませる。
「僕は、この世界が色付くことなんて、望んでいない。だけど、あんたは別だ」
 フヨウの方に向けられた顔に浮かぶのは、愛想笑いになっていない愛想笑い。ここまで来れば、素晴らしい演技も白々しい。
「そういうわけで、着て貰うよ」
 サクの手元にあったのは、比較的シンプルなパーティードレスだった。色は薔薇色。
「嫌だと言っているだろう」
 フヨウの声は、毛羽立っていた。
「妖界王陛下に会うのに、パートナーが葬式に行くような格好だったら、流石の僕も引くよ」
「絶対思ってないだろう」
 そう、二人は妖界王主催の立食パーティーに招待されたのだ。
「似合うと思うんだけど。クリスが持ってきたやつは、胸元開いているから嫌だろ」
 二人の親友、クリスが持ってきたドレスは、胸元は開いているし、背中は露出しているし、フリルが多くあしらわれていた。
「その点では感謝しているが、こんな派手な色は私に似合わない」
「折角選んで来たのに」
「私は知らん。それより、黒のやつはどうした?」
 フヨウが着ようと思いた黒のドレスが見当たらないのだ。
 不機嫌なフヨウの声と対照的に、ああ、とサクは淡白な声を出した。
「マラボウストークと二人で、間違えて燃やしてしまったよ」
 フヨウは声にならない叫びを上げる。パーティーまで、ドレスを買いに行く時間はない。
 それと同時に、勢い良く扉が開いた。
「フヨウ様、紫のネックレスを買ってきました。きっと、紅いドレスに合いますよ」
 無邪気な笑顔のマラボウストーク。
「私は何か悪いことをしたのかね?」
 フヨウは、恥ずかしさに涙目になりながら、着替え始めた。
「綺麗だよ、フヨウ」
 着替え終えたフヨウに、サクは微笑んだ。因みに、フヨウは座り込んでしまい、サクは、それを見て、さらに笑みを深めた。


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