The Night Monarch
Mermaid


「私ね、人魚に間違えれたことがあるのよ」
 憂いを含んだようなクリスのその言葉は、波乱を生むことになる。
 皆の反応は一様だった。
 フヨウ、サク、ジェイクは、何とも言えない複雑な表情で顔を見合わせるだけだった。誰も何も喋らない。痛まれない沈黙が流れる。
「ちょっと、あんたたち、どういうことよ」
 声を荒らげるクリスに、びくりと肩を震わせるのは、当然、フヨウである。フヨウがクリスに怒られる回数は、半端無いのだ。
「お世辞でも良いから何か言いなさいよ」
 再び沈黙が流れた。空気は重い。クリスの目は、かなり吊り上っている。その空気に、耐えられなかったの者が、再び口を開く。
「お世辞、言って良いのかね」
 フヨウは尋ねる。やっちゃったね、という表情の男性陣を、見る余裕などはなかった。
「だから、なーんで、あんたはそうなのよ」
「指示語ばかりで、何故怒られているのかが分からないのだが」
 どぎまぎするフヨウに、救いの手を差し伸べるように輩は、いるはずない。
「そんなことどうでも良いのよ」
 びしりと指差され、心底困った表情をする夜の君主様に、威厳など欠片もない。


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NEO HIMEISM

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