The Night Monarch
Spairal Stairs


 夜の町を歩いていると、目の前に螺旋階段が現れた。貸家なのだろうか。二回に繋がる螺旋階段は、使用されているようだった。
「サク殿、貴殿のお屋敷には、螺旋階段はあったかね」
 フヨウはゆっくりと歩きながら、そう尋ねた。
「あったよ」
「ほう……では、螺旋階段で遊んだことはあるかね」
 フヨウは意味深に笑う。
「どうやって?」
 螺旋階段は階段だ。一体何をして遊ぶというのか。
「いや、普通に遊べるだろう」
「あんたは遊んでいたのかい?」
 間髪入れずに尋ねる。すると、フヨウは心底残念そうな顔をした。
「いや、私の家には螺旋階段はなかった」
 話が繋がらない。考えた挙句、ありえないことを尋ねる。
「遊びたいの?」
「私が子どもだったら、確実に遊んでいただろうね」
 フヨウは穏やかに笑った。そして、こう続けた。
「階段が螺旋状になっているのだよ。追いかけっこをする時、手を伸ばして相手の足に触るか、そのまま追いかけて捕まえるか選べる。遊びに多様性が生まれるではないか」
 満足げに笑うフヨウを見て、僕は溜息を吐いた。



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NEO HIMEISM

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