Allegro


 穏やかな秋晴れの日に貰った成績表は、とても穏やかに全て同じ数字。
「まさか、全て3とかな……」
 十段階評価で3などというものは、成績の下の方である。
「ジェンは厳しいな」
 毎年6かそこらなのに、とカシワはぼやく。
 しょうがないと言ったらしょうがない。特別学級の生徒と普通の生徒を比べてはいけない。
 カシワはそう自分を慰めようとしたが、納得いかない。
 少なくともカシワは、授業中に寝るとか、訓利の調合をするとか、新しい魔法の研究をするとか、私語をするなどということはしていない。
「どうしたカシワ。食べないのか?」
 明るい声が聞こえてくる。そう、今は夕食の席。
「何見ているんだ」
 向かいに座るライアルは返事がなかったのが気になったのか尋ねる。
 頼むから話し掛けないでくれ、というのがカシワの本音だ。
 彼らの成績を聞くと、さらに落ち込みそうだったからだ。
「まさかそれは成績表?」
 斜め前のフレアが話に入ってきた。
「成績表? 私なんか全て1だったぞ」
 カラカラとライアルは笑いながら、大声で言う。
「嘘だろ……」
 ライアルは基本的に何でも良くできる。クラスでも優秀な生徒である。
「何故嘘をつかねばならない。当たり前だ。授業中は偉大な悪戯計画を立て、試験中は寝ていた」
 得意げにライアルは笑う。
「君も全く反省してないよね。カシワを少しは見習ったら?」
「私の実力は数字で計れない。何故か、それは偉大だからだ」
 ライアルは豪快に笑う。
「今回はリリーに勝った。彼女は2がある」
「何で勝負してるんだよ」
 もう、カシワはどうでもよくなった。一々悩んでいる自分がアホらしく思えてきた。
 この学級にとって、成績はきわめてどうでもいいものと定義されているようだ。
「よし、カシワ、私と勝負しろ」