Unnatural Worlds
プロローグ
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暗闇が割れ、日が差し込み始める。
「私は負けてなどいない。貴殿らにとっては、たった二十年。私が何も残さずに、この大地を踏みしめてきたとは思うな。この世界は変わる。時代は大きく動く。もう、貴殿らには止められまい」
彼女は強い剣士だった。しかし、その強さは、大切な人を守り抜いた美しい女剣士には遠く及ばないような程度の物だった。古の時代、夢を追い続けた剣士のような、強い精神を持っているわけでもなかった。
まるで幻影のような世界で生まれた剣士が、「幻影」と疑わぬ何かに向けて、そう叫んで、十数年。
無謀な戦いを申し込んだ馬鹿な剣士に負けず劣らず、救いようもない馬鹿な人間が、動き出そうとしていた。
世界は四つある。天界、妖界、魔界、そして、我々の住んでいる世界だ。
議会による政治を行う天界と、建国以来、ただ一人の王が支配する妖界。二つの対立する世界は、争っていた。平等を重んじる天界と、自由を重んじる妖界が争うことは、避け難いことだった。
妖界と天界の戦争は、少数民族が多く、未だ統一のされていない魔界が戦場となった。それがさらに、民族対立が絶えることのない魔界の混乱を招いていた。
彼らは憎しみあっていた。天界と妖界は、相容れぬお互いを憎み、統一されぬ魔界を見下した。天界と妖界の争いによって血を流し続けた魔界は、天界と妖界、そして無知なる世界を憎んでいた。
数年前、その四つの世界に認められ、四界の頂点に立つ人間が現れた。
四楼キナ。魔界出身の若い女性だ。妖界と天界の小さな諍いを幾度となく解決し、絶大な信頼と権力を集めていった。
彼女は、相互理解のため、四界を背負うことになる若者を集めた。誰もが彼女の言葉を信じてはいなかった。しかし、彼女には自信があったのだ。
彼女は、この十数年間で、四界が急速に変化していることに気付いていた。そして、彼女の自信は、「物」になる。
そんな「偉大なる四楼キナ」を姉に持つ者がいた。名前は、ライアル。
後々、男装の麗人と語り継がれることになる人物は、とてもとても「男装」の「麗人」には見えなかった。そして、悲しいことに、実際そうではなかった。
ライアル。その名の意味は、「偽り」。虚ろな世界を言い表したかのような名前に相応しい人物だった。
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