Dark
Rainbow
闇色の虹
プロローグ
四楼キナには、二人の弟子がいた。
ジェン少年と、クリス少年である。そして、彼女には兄弟がもう一人いた。
「ライアル、また普通の人を襲っただろう」
二十歳くらいの少女・キナは、輝くような笑顔で言った。
「なんのこと?私はなにも知らない」
十二歳には見えないくらいかわいげのない少年のライアルがとてもわざとらしい声で言った。いつも、姉に酷い目に遭わされていることを考慮しても、かわいさの欠片もない。
「おかしいねぇ、でも、そこに落ちていたこの雷爆弾にこもっている魔力が、あんたそっくりなんだ」
キナは近くにあった雷が入った玉を指差した。
「クリスが持ってたんじゃない?」
「クリスが?だとしても、あそこから強力な魔力を感じたんだけど……あの魔力はクリスでもないし、ジェンはあんなに魔力反応は出ない。しかも、今も私の目の前から感じられる」
「リリーだろ、きっと。あいつはこのごろ魔法に目覚めたらしい」
この前遊びにきた友人の名を言うライアル。当然、この場にいるはずがない。
キナは、自信満々に嘘を言う弟を無視して話を続けた。
「お前の課題は自分とは全く違う人でも、受け入れられるようにするんだね。そうしたら、ただの喧嘩に一般人を巻き込むこともなかろう。じゃあ、生きて帰って来るんだよ。妖界送り♪」
満面の笑顔でキナはすばやくライアルの魔力を奪うと同時に、床に大きな穴をあけた。
「へ?」
ライアルがその意味を理解する前にキナは妖界につながる穴にライアルを突き落とした。
「さて、私の愛する弟がいなくなったことだし、今日は魔法の特訓だよ♪」
キナは楽しそうにジェンとクリスのほうを向いた。
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