Dark Rainbow
 
闇色の虹
 
彼らの始まり
 
 
 
 妖界には、いくつか町があるが、その一つ、カルトラストの危険地帯に私たちはいた。
 
「あー、なんか暇〜」
 
 バンダナをした金髪の少女、サファイアはいつ攻撃されるか分からない状況の中のん気にこんなことを言っている。 まぁ、確かに暇なんだけど。
 
 私は、赤茶色の髪の毛を手入れしながら、背後にいる邪悪なオーラを漂わせながらも姿が見えないアン(赤毛でポニーテールをしている私の妹)が気になりつつもあえて無視することにした。
 
「じゃあ、どこかに遊びに行かない?」
 
 そのとき、茶髪の髪を二つ結びに結びなおしながらルピアはアンに全く気付かずに明るい声で言い出した。ついでに、かなり影が薄いパークスはというと、私の方を落ちつかなそうにちらちら見ている。 どうやらパークスはアンがいることに気づいた様子。
 
「ねえ、サリーはどこに遊びに行きたいの?」
 
 さっきから二人で仲良く話していたルピアとサファイアがいきなり私に話しをもちかけてきた。観察してみると二人ともパークスが視界に入っていない。驚いた……二人はアンだけでなくパークスの存在さえも気づいてないみたい。
 
「魔界に行くのはどう?」
 
 とりあえず私はそのことを話すのは面倒なので、さっき訊かれたことに答えた。
 
「ふふふ、それもいいけど、その前に魔界人が今さっき落ちて来た気配がしたからそれで遊んでからにしたらどうかしら。あら、そういえばパークスっていつもながら影が薄いわね……」
 
 アンは突然姿を現し、そして変なことを言い出した。話に入る気だったら最初から姿を現わしてたらいいのに。
 
「余計なお世話だ」
 
 パークスもやっと話に入ってきた。
 
「あっ、アンとパークスいたのっ!?」
 
 サファイアとルピアがほぼ同時に叫んだ。 何で今まで気づかなかったのか謎ね。
 
「最初からいたよ……」
 
 当然、パークスはかなりショックを受けたみたいだ。可哀想というよりは、とっても哀れ。だがサファイアはパークスのことをわざと無視した。
 
「まぁ、とりあえずその魔界人のとこに行ってみようよ」
 
 突然サファイアは悪魔の微笑を浮かべながらとんでもない事を言い出した。危険な気もしたけど、反抗する気も起こらなかったので私は仕方なくルピアとパークスと共にアン・サファイアに魔界人のいる気配のする場所に向かって引きずられて行くことにした。
 
「ん?ここって妖界でもっとも危険な所じゃなかったか?」
 
 サファイアとアンが立ち止まった場所の周りを見回してから、パークスが身の危険を感じて不安そうにつぶやいた。
 
 しかし……
 
「ここら辺じゃあない?」
 
「ふふふ、確かに気配はここら辺が一番強い…」
 
 そんなパークスをまたもや無視して二人はとても楽しそうに話している。この二人の神経はいったいどうなっているのか、本当に疑問だ。
 
 その時かなり強い邪気の強い魔物たち(妖界でもっとも強い魔物と思われる)が魔界人を襲おうとしているのが見えてきた。
 
「あの子が落ちてきたって言う魔界人?」
 
 ルピアは魔力がこの中で一番強いのにも関わらずアンに訊いている。
 
「そうよ」
「あら、意外に幼いね♪」
 
 なぜかサファイアは楽しそうだ。
 
「助けに行かないの?」
 
 私は心配になって訊いてみることにした。(一般的な妖界人は相当のことがない限り人を心配しないものだが、私やルピアは例外だそうだ。)
 
「えー、でも面白そうだからもう少し様子見てみようよ」
 
 私の心配を無視してサファイアが言う。 しょうがないか、こういうときは何を言っても無駄だから。
 
「いいわね」
 
 アンも当然のようにその意見に賛成した。
 
 ルピアは《そんなことでいいの?》という顔をしている。ついでに私はすでにどうでもよくなって軽くため息をついた。
 
「ねぇねぇ、もうすぐでバトルが始まりそうよ」
 
 サファイアが危険な状況なのにも関わらず、(まるで映画を見る前の幼い子供のように)わくわくした声で言った。
 
 
―*―*―*―*―
 
 
(まったく、ここはいったい妖界のどこなんだ? その前になんでこんなにたくさん魔物が回りにいるんだよ)
 
  ライアルは心の中でぶつぶつと文句を言っていた。
 
 それもそのはず。今、ライアルはすべての魔力をキナに取られてしまっている上、魔物の中でもっとも強いといわれている魔物(百匹以上)に取り囲まれてしまっているところなのだ。
 
 いつもなら助けてくれる、親友の黒蛇、スザクもいない。今はまだ、部屋で寝ているはずだ。
 
 色々考えているうちに、魔物がいきなり襲いかかって来た。(もちろん全部)ライアルはなんとかその魔物の攻撃を避けていった。
 
 近くで攻撃を受けた岩が一瞬にして消し飛ぶのが見えた。まともに攻撃を受けたら確実に命はないだろう。
 
 ライアルは、冷たい汗が背中に流れるのを感じた。
 
 
 

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