「誰だ」
四人が振り返ると、そこには一人の少年が立っていた。殺気が一気に緩む。
背はリリーと同じぐらい。歳はライアルと同じぐらいだろう。
そして右目を黒い布で隠している。空色のフードの所為で、髪は見えない。
「僕はリィド。氷の国の者」
うっすらと笑みを浮かべながら、少年は言った。その笑顔は綺麗だったが、不敵だった。
「氷の国の者が雷の国に何のようだ」
ライアルはリィド睨みつけた。
「強い魔法反応、嫌な予感」
リィドは必要なことだけを言った。相変わらず、口元には笑みが広がっている。
「そこで、君たちと一緒に黒幕だと思われる妖界王を倒そうと思って」
リィドは微笑んだが、ライアルは相変わらず訝しげにリィドを見ている。
「お断りだ」
リィドはライアルの発言を予想していたようであった。やはり、というように笑う。
「雷の国の領主は聞いてたとおり無愛想だね。僕が氷原の翼でも?」
リィドはふわりとマントを揺らし、背を見せた。
クリーム色のマントには、丸い円とクロスが交わる模様が大きく描かれていた。
「信用は出来ないが実力はあるということか」
ライアルはにやりと笑う。
「何よ、氷原の翼って」
リリーが眉をひそめてライアルに訊いた。
「氷の国の最強と謳われる魔力保持者に与えられる称号。要するに魔界最強の氷の魔法使いに与えられる称号だ」
ライアルが説明した。
「じゃあリィドもカシワさんも連れて行きましょう」
ジェンが笑顔で言った。
「俺も連れて行ってくれるのか?」
カシワが目をきらきらさせて言った。ジェンは頷く。
「大丈夫です。元々、誰も死にませんよ。貴方がいるのですから」
「絶対に元気に魔法学校の扉を壊すのよ!」
ライアルの心境を悟っているリリーとジェンが言った。ライアルは驚いたような顔で二人を見た。
「相変わらずだね」
ぼそりとリィドは呟く。
「あら、嫉妬かしら」
隣にいたアンは、くすりと笑う。
「僕はああいうのは嫌いだよ、王女サマ」
たくさんの紫電が、暗い灰色の空に交差した。