ライアルは、カシワを荒地に連れ出した。
「まず、魔界、及び妖界では、攻撃魔法、もしくは防御魔法が使えないとお話にならない」
カシワはごくりと唾を飲み込んだ。
「だが、風魔法は攻撃に適した属性とは言いがたいし、防御魔法は八大属性中最低ランクだ……落ち着けよ」
今にも口を挟みそうなカシワに、ライアルは溜息混じりに言う。
「ただし、風魔法は威力が低いが発動は速い方だ。これは大きな強みだ。何故かというと、お前が魔法を行使しなければいけない時というのは、私たちがお前に襲い掛かる敵を止めるには手遅れの時だからだ」
「気に食わない」
カシワが不満げに呟く。ライアルはからからと笑い始めた。突然の反応にカシワは戸惑う。
「文句を言うな。私だって最初はそんなものだった」
『ライちゃん、最初は魔法さえ使わせてもらえなかったもんね』
どこがおかしいんだ、と不満げに言うカシワを無視して、ライアルは笑い続ける。スザクもどこか楽しそうで、ライアルの袖口から顔を出した。
「大丈夫だ。風魔法は魔力消費が少ない。杖を落としたとしても、お前の子ども騙し程度の魔力で何とかなる」
にやりと笑って、ライアルが言えば、カシワはお決まりの反応。それでも手が出ないのは、やはり彼特有の雰囲気のせいだろう。
「一々腹の立つやつだな」
吐き捨てるように一言。ライアルは相変わらず笑っている。
「大丈夫だ。私に任せろ。お前を四界に通じる一流の魔法使いにしてやるよ・・・・・・多分」
特有の好戦的な笑顔に、一瞬表情を変えたカシワだったが、すぐに元に戻る。最後の一言について、文句を言うカシワ。ライアルは、やるぞ、と言ってわざとらしくカシワを止めた。
ライアルは、風から刃を作り出す方法を簡単に説明した。しかし、一回説明しただけでできるはずもない。
「何か違うな」
ライアルは形にならない風を見て、ぽつりと呟いた。
「どこが違うんだ」
すぐに形にならない苛立ちだろう。カシワは声を荒らげる。
「風は気紛れだ。そして、お前は一途だ。何か違う。とりあえず私もするべきことがあるから、暫く練習しておけ」
口を挟む暇もなくライアルは言うと、その場を立ち去った。ふわりと風が吹いた。