お母さんへ

 お母さんが死んでしまったのに、実感がわきません。
 養父に、手紙を書いてみたらどうかと言われて、書いてみました。
 元気ですか? 僕は、毎日楽しく過ごしています。
 相変わらず友達は少ないけど、一人だけでいることはほとんどないから安心してください。
 僕の養父になってくれた人は、軍公様です。(以下、父と書きます)
 父のことは前から知っていたけど、同じ部屋で生活するようになって、色々なことが分かりました。
 まず、父は字が読めません。
 そして、字が読めないことを理由にデスクワークをやらないので、僕はいつも苦労しています。
 難しい言葉がたくさん並んでいる報告書を読み上げるのは大変だけど、それ以上に父のやる気を引き出すのが大変です。
 軍のみんなが一生懸命書いた報告書を読まないってどういう神経しているんでしょうか。
 でも、最近は、「エースさんだったら、きっちりデスクワークもこなすでしょうね」と言うと、父がいそいそと仕事を始めることに気付きました。
 すごい発見だと思いませんか!
 そんな父ですが、僕が遅くまで城を探検していた時は、探しに来てくれました。
 しかも、三隊長まで動員して。
 職権乱用です。申し訳なくて、恥ずかしかったです。
 だから、僕を心配して、気が立っていた父と喧嘩してしまいました。
 でも、嬉しかったです。
 エースさんも元気です。シャラムさんも元気です。相変わらず、とっても仲が悪いです。
 お母さんは、誰とでも仲良くしていたし、ちゃんと報告書を書いていましたよね。
 僕も、周囲の大人たちがこんなのなので、しっかりとしたいと思います。

ラスト

実感がわかないって書いたのですが、夜になると涙が出てきます。
自分でも理由は分からないんです。
悲しいのか辛いのか、自分でも分からないのです。
毎日楽しいのに、父が隣で寝ているのに……

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写真素材(c)Neo Himeism

僕はお母さんに会いたい。