Dark Rainbow
 
闇色の虹
 
 
 
 
「この城に戻ってくるのって、たしか一年ぶりくらいね」
「まさかこんな形で戻ってくるなんてな」
 
 そういえば家に帰ってくるなんて何年ぶりだろう。
 
 ルピアとパークスがしみじみと話しているのを聞きながら私は昔のことを思い出していた。私の場合、家出して数十年くらいは経っているような気がするな。
 
「あら、この前占いした時から私は知ってたけど……ふふ」
「それならさっさと教えてよ」
 
 何故か知らないけどさっきから私たちはずっと話しをしている。大丈夫なのかな……まぁその会話にずっと参加している私も私なんだろうけど。
 
「そういえば魔法陣ってどこにあるんだよ」
 
 話をしているうちにライアルは思い出したように重要なこと言い出した。
 
「さぁ?」
 
 あっ、アンと被ってしまった。私が微妙に衝撃を受けているのを見てアンは、不気味に笑う。
 
「あら、サリー何をショックに受けてるの?」
「あんたとわずかに気が合ったことに対してショックを受けたのよ」
「ひどいことを言うわねぇ……ふふふ」
 
 はぁ、もう嫌……何よこの妹は。
 
「まぁまぁ、そのことは置いといて、私たちはライちゃんを元の世界に戻すためにわざわざここに来たんだから。もうそろそろ探そうよ」
 
 えっ、サファイアもしかして。
 
「あれおかしいな……サファイアも最初っから魔法陣探しをしていると思ったんだけど。しかも語尾に♪マークがついてたような気がするのは僕の気のせいか?」
「パークス、今日はやけによくしゃべるわね。もしかして、ライちゃんに気があるとか?」
「おい、変な話題持ってきてごまかそうとしてないか?」
「気のせいよ、気のせい」
 
 サファイアはパークスの疑問に対して自信たっぷりに言い切った。
 
 どこからその自信が出てくるのだか。(ライアルの性別自体分からないのに)
 
「そんなことより、みんな気にならないの?」
「なにが?」
「さっきから話してたのに、まだ誰にも見つかってないでしょ」
「あぁ、言われてみればおかしいね」
「ふふふ。今頃気がついたの」(馬鹿にしたような態度のアン)
 
 あれ、ルピアとサファイア、気づいてなかったんだ。
 
「じゃあ、何で今まで言わなかったのよ?」
「だってその方が面白いでしょ」
「……」
 
 ルピアは軽くため息をついた。
 
「おい、分かんないこと色々考えても始まんないからさっさと進まないか?」
「ライちゃんの言う通りね。よし、どんどん先に進もっか♪」
 
 数時間もの間ずっと怪しそうな所(つまり全部の部屋の隅々まで)を探し回っているのだがいっこうに魔法陣らしきものは見つからない。しかもおかしなことに私たちは一人も城にいる人達を見かけていない。
 
 すると突然、珍しく黙々と魔法陣探しをしていたサファイア。
 
「あーもう何で見つからないの!!」
 
 ついに我慢の限界に達して思いっきり叫んで(または放棄して)しまった。
 
「落ち着いてサファイア」
 
 ルピアはいつものようにサファイアをなだめる。
 
「分かった。でも、このままじゃ、どんだけ時間が掛かっても魔法陣なんて見つからないと思うよ」
「確かに、私達はまだ城の十分の一しか探してないわ」
 
 サファイアの言っていることはほとんど間違っていないだろう。はっきり言ってこの城は妖界で最も巨大な建物だ。ほんの数時間ですべての場所を探しつくすことなど到底できない。
 
「それなら、二人一組で別々の場所を探すのはどうかしら」
「アンってばスゴイ♪」
 
 サファイアはアンに尊敬の目を向けている。それはすごいことじゃないと思うんだけどなぁ。
 
「でもどうやってペアを決めるんだ?」
「そうね、じゃあ私が万が一のために持ってきたくじを使うのはどう?」
 
 そう言いながらサファイアはくじをポケットの中から取り出した。どういう万が一のことを考えてたのよ。私は呆れて声が出なかった。
 
「皆、順番に引いてね♪」
 
 サファイアはなぜかはしゃいでいる。
 
「じゃあ私から引いていい?」
「いいよ、ルピア」
 
 ルピアはその言葉を聞きながらくじを引いた……色は赤だった。
 
「次は私ね♪……私は青色よ」
 
「ふふふ、私は赤……あら、ルピアと一緒ねぇ」
「……うそ」
 
 ルピアの顔がいっきに青ざめた。
 
「私は黒色だ」
 
 いつの間にかライアルもくじを引いていた。
 
 ……それにしてもなぜ赤・青の次に黒を? というのは置いといて、私はくじを引くことにした。
 
「黒ね」
 
 うーん、アンよりまだ良いかも。
 
「よーし、早速魔法陣探しに行きましょ♪」
「おい、また僕の存在忘れてるぞ」
「あっ、パークスごめ〜んまた忘れてたわぁ」
 
 サファイアがやけにわざとらしく謝った。様子からして今回はパークスの存在を忘れていなかったらしい。
 
「もういい」
 
 ここまで行くとパークスが少し可哀想になってきた。
 
 ということで、私とライアル(黒チーム)、アンとルピア(赤チーム)、サファイアとそのサファイアの攻撃を受けていたパークス(青チーム)がペアを組むことになった。(チーム名はサファイア命名)
 
 そして、私とライアルは一・二階と地下室、アンとルピアは三・四階とその隣に浮かんでいる王の屋敷、サファイアとパークスは五・六階と屋上を探すことになり、魔法陣らしきものを見つけたらすぐに魔法で伝えることになった。(比較的まともなこの案は、ほとんどルピアの案)
 
 
 
 

BACK TOP NEXT

 
 
背景画像:空色地図