Dark Rainbow
 
闇色の虹
 
原因
 
 
 
「姉さん」
「四楼」
 
 アンとライアルは同時に呟いた。
 
「アン、久しぶりだねぇ」
「……」
 
 四楼だという少女は笑みを浮かべアンに話しかけた。あのアンが話しかけられたのにも関わらず何も話さない所から見てもこの少女がかなりの人物だということが分かる。
 
「っていうことは、あなたが四界を治めてるっていうあの四楼なんですか?」
 
 いまいち状況を把握できていないサファイアは少女にいつもの口調で話しそうになったが、(敬語を使わないといけない気がして)何とか敬語らしき言葉を使って話しかけた。
 
「ああ、君たち脳内淋しい者でも分かるだろうけど私が四楼のキナだ。私は妖界王との会議をした後たまたまここにいたらあなたたちが突然現れた。だから、ゆっくり休みたいところだが妖界から生きて帰ってきた可愛い弟とその仲間たちのために私は話をしている。これで状況が理解できたかな?」
 
(私たちと会ったのはたまたまではないと感じたが)四楼は満面の笑みを浮かべたまま、皮肉のこもった口調でサファイアに言った。
 
「へ〜、そうだったんですか」
 
 いくらかマシになった敬語でサファイアは答えた。
 
(ついでにこの時、私たちはこの人にだけは絶対に逆らわないでおこう、と同時に心の中で呟いた)
 
「まぁそんなことはどうでも良いとして、突然だがあなたたちには世界にある魔法学校の特別塔の生徒として入学してもらうことにした」
 
 有無を言わせぬ口調で四楼は私たちが想像もしていなかったことを言い出した。
 
「!?」
「安心しろ。妖界王にはちゃんと許可は取ってある」
 
 いや、そういう問題じゃあなくて……
 
「もしかして、私たちに決定権はないってことですか?」
 
 ルピアが私たちを代表して四楼に気になっていたことを訊いてくれた。
 
「そこら辺はどう取ってもらってもかまわないが、お前たちは少しの間は妖界に戻れないはずだ」
「??どういう意味ですか?」
 
 理解できずにルピアがまた尋ねると、四楼はわざとらしく首を振り、
 
「知らないなんて、不幸だね。アン、あそこで何があったのか教えたらどう」
 
 と、さっきから黙りこくっていたアンに話を振った。
 
 アンは少し楽しそうに話を始めた。
 
「分かったわ。まず私が妖界の城に侵入する時、壁を溶かしたでしょ……ふふふ、実はそれ、私が細かく計算してどの壁をどういう風に溶かしたら妖界のバランスが崩れるのか調べ、もし妖界のバランスが崩れたらどうなるのか実験してたのよ、ふふっ。結果としては城を守っている兵が忙しくなって、しばらくの間魔法が使えなくなることだけだったけど」
 
 まさかあの時そんなことを考えて行動していたなんて、一体この妹は何をしたかったの?
 
「じゃあ、途中で魔法が使えるようになったのは?」
 
 サファイアは気になってひとつ質問した。
 
「それは城にいた兵士が直したんでしょ」
 
 私はアンに代わってその質問に答えた。
 
「そうよ。ただ予想外だったのは王が大切にしていた宝が破壊されて、私たちがもし妖界に戻ったら宝が破壊されたことに関わったとされて、捕まることになりかねないってことかしら……ふふふ」
「あれを壊すことはそんなに大変なことだったんだな」
 
 話を聞きながらライアルはしみじみと言った。悲しいことに反省の色は全く無い。
 
「そういうことね」
 
 アンはまた楽しそうに答えた。
 
「これでなぜ妖界に戻れないのか分かった?」
「はぁ」
 
 ルピアは自分が見ていない時に起こった自分に直接関係してくる事件に対してわずかながら悲しみを覚えているようだ。
 
「それじゃあ、その魔法学校に行くにはどうすればいいの……ですか?」
 
 気を取り直し、また敬語なのか分からない敬語でサファイアはキナに尋ねた。
 
「近くにある魔法陣で移動するんだよ。言い忘れていたが、妖界王と相談した結果これから妖界は安全のため魔法を使えなくして、魔法陣の場所を増やすことになったから忘れないようにしておくように、分かったね?」
 
 四楼はこれ以上質問を受け付けないとでも言っているかのようににっこりと笑って言った。
 
「こんな時に言うのは気が進まないけど、四楼はともかく、皆また僕の存在忘れてないか?」
 
「あっ」
「忘れてた」
「そういえば、いたんだね♪」
「すまないな」
「ふふふふ」
 
 上から順に、ルピア・私・サファイア・ライアル・アン。そういえばパークスの存在、四楼が出てきたところから完全に忘れてた気が……。
 
「そんなどうでもいい人は置いといて、魔法学校に移動するよ」
 
 四楼は笑って、そう言ってから移動の呪文を唱え始めた。さり気にこの人が一番酷いのであった。
 
 
 
 

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